「ワンコの健康簡単チェック−3.目の病気」
(質問)
@朝起きると目ヤニがたくさんついている。
A白目が赤くなっている。
Bいつも涙目。
C目の辺りをしょっちゅう痒がっている。
D目を痛そうにシパシパさせている。
Eネバネバした目ヤニがいつも出ている。
F目の周りが赤かったり、毛が薄い。
G夜の散歩を嫌がりだした。
H歩いていてよく物にぶつかる。
I目の大きさ、形がいつもと違う。
(判定)
*YESが2個以上あれば、目の病気を疑いましょう(とくにC〜I)
(解説)
「究極の獣医さん」ってどんな獣医さんのことを言うのでしょう?他の病院では手に負えない病気も治してしまう、ブラックジャックみたいに難解な手術もやってのける、いつでもどこでも優しく診察してくれる・・いろんな意見がありそうですね。私が目指す究極の獣医さんはと言うと・・患者さん(ワンコ)が診察室に入ってくると病状も聞かずあれこれ検査をしなくてもジッと見つめただけで「うーん、**病ですね」とずばり診断でき、しかも高い薬や手術をしなくても治してしまう・・「そんな奴おらへんやろう!」と漫才の大木ひびき・こだま師匠に言われそうですが、実際にどんどん開発されている新薬や鍼灸治療を代表とする代替医療の拡がりで、獣医学も進歩を続けています。「千里の道も一歩から」私なんぞはまだ2歩目にも達していませんが自分なりに努力を重ねておりますです、ハイ。で、ワンコを診察するときはまず全体を眺めてオーラと言うか雰囲気を読みます。次に大事なのが、今回のテーマである「目」ですね(ふう、やっと本題に近づいてきました)。人間語でしゃべってくれないワンコの状態を読むには、まさに「目は口ほどにものを言い」、目がポイントになります。目の病気って、犬ではそんなに多いものではありませんが、飼い主さんも日ごろから異常に気づきやすいだけあって、眼科疾患のワンコはほぼ毎日、病院にやって来ます。
@からBはどのワンコでも日常みられがちな症状ばかりです。@目ヤニは涙と外界の埃や汚れが混ざって出来るものですから、健康なワンコでも多少はあるもんです。A目の充血も軽度なら目が大きな小型犬では普通ですし、B涙目はクーちゃん(チワワ)のアピールポイントです。ただし、これらと同時にCからEがYESとなると目の病気を疑う必要があります。
@〜BプラスCもYESのワンコは結膜炎かもしれません。これは図で言うと、眼球の周りにある結膜が炎症をおこしたもので、アレルギーや細菌感染などが原因であり、眼の病気で最も多いものです。
同じく角膜炎は眼球表面の角膜が炎症をおこすもので、症状は結膜炎に似ていますが、痒いよりは痛い病気なのでむしろDが該当します。この角膜炎が進行したり痒くて自分でこすりすぎると角膜に傷が入り、角膜潰瘍になります。こいつはかなり痛い病気で、ACDがそろってYESとなり、顔を触ろうとすると嫌がります。熱が出て食欲元気がなくなることもありますので、早めの治療が必要です。そのほか、小型犬でよく見られるさかさまつげ(睫毛乱生)、短頭種に多い眼瞼内反症でも同様の症状が見られます。
E目ヤニがやたら多い病気にドライアイ(乾性角結膜炎)があります。@の目ヤニが多くても、黒っぽく乾燥しており炎症反応が見られないものは正常範囲ですが、ドライアイにかかると白っぽくネバネバした脂っぽい目ヤニが常に大量に出てうっとおしそうにします。ドライアイは免疫異常が原因で涙が減少して目が乾く病気で、終生点眼する必要があります。
Fはここまでに出てきた結膜炎・角膜炎(角膜潰瘍)ドライアイでもYESになるケースが多いのですが、目よりもむしろ顔をかゆがっている場合も多く見受けます。つまり、@からEは当てはまらないでFだけがYESだと、これは目の病気ではなく、眼瞼炎やアレルギー性皮膚炎などの皮膚病の範疇になります。この場合、治療も目薬ではなく飲み薬をはじめとする内科療法が主となりますので、お気をつけ下さい。
GHは視力が低下したときに気づきやすい症状です(犬の場合、鋭い嗅覚や聴覚がカバーするため、視力低下は発見が遅れがちです)。該当する病気としては、白内障(老齢犬に多く、目の中のレンズ=水晶体が白く濁って見える)、角膜色素沈着症(目全体が黒っぽくなる。シーズー、パグで多い)網膜剥離、ブドウ膜炎など多岐にわたりますが、いずれも進行すると回復困難なことが多く、異変に気づいたら早めに動物病院で正しく診断してもらうことが大切です。
もう一つ視力を失う病気に緑内障があります。これは前眼房水(図参照)が増えて目が徐々に大きく腫れ、眼圧上昇とともにしばしば痛みを伴って進行します。光が目に当たると目が緑色に輝くことからこの病名がついたのですが、DHIがYESの時は要注意で、眼圧を下げる早急の処置が必要です。
また、ある日突然、目の内側がものもらいみたいに赤く腫れる病気にチェリーアイ(瞬膜腺肥大)があります。ビーグルやコッカー、チワワなどに多いこの病気、目の内側にある第三眼瞼(瞬膜)の一部が腫れて突出するもので、不快感からワンコは目をこすり先述した結膜炎や角膜潰瘍をひきおこすこともあります。初期なら点眼で治まることもありますが、たいていは摘出手術が必要になりますので、CIがYESのときも病院に走りましょう。
以上、眼の病気の代表的なものを挙げてみましたが、命にかかわる緊急の病気は少ないものの、痛みや不快感があったり視力を奪われたり、QOL(生活の質、つまり毎日を快適に過ごすために欠かせないこと)を損なうケースが多いようです。それぞれの治療方法も家で何回も点眼が必要だったり、全身麻酔下での手術が必要だったり、ワンコだけでなく飼い主さんの苦労もかなりのものです。「目に入れても痛くない」かわいいワンコの幸せのためにも、いつも目を見つめて語り合い、病気の早期発見にいそしんでくださいね。