「ワンコの健康簡単チェック2−皮膚病」

(質問)

@毎年同じような時期に体を痒がっている。

A体の同じ場所をよく足でかいたり舐めたりしている。

B床に顔をよくこすりつけている。

C背中に白いフケが多い。

D体を触るとベタベタしている。

E不快な体臭がする。

F毎日のように毛がよく抜ける。

G一ヶ月以上前から体の表面にできものができている。

Hシャンプーやブラッシングはあまりしていない。

Iおやつを毎日のようにもらっている。

(判定)

*3つ以上がYESなら、皮膚病かもよ。

 

(解説)

「京都は景色が綺麗でいいですね」と、このごろよく言われます。確かにおっしゃるとおり、冬の雪景色や春の桜並木には思わずため息が出るような日本の美があります。でもね、観光客があまりにも多すぎて、名所にはほとんどいけないんですよ。それに夏は蒸し暑くて犬が熱中症になるし、冬は凍るほど寒くてネコが鼻水垂らすし、動物たちが暮らすには少々過酷な地でもあります。そしていま、季節は春。過ごしやすいものの、ワンコの皮膚病が増える季節がやってきました。

 皮膚病は犬の病気では最も多いものの一つで、犬種や年齢、生活環境などでさまざまなタイプの病気がみられます。症状としては赤くなる、痒がる、ぷつぷつができる、毛が抜ける、ただれる、など・・(おそらく、皮膚が完全に健康なワンコを見つけることは、生まれてから一度も嘘をついたことがない人を探すことほどに困難かもしれません)今回のチェックシートも、これだけで判定がつくほど皮膚病は単純な病気ではありません。世の獣医さんはみな、皮膚病の診断や治療には毎日、ほとほと手を焼いているのです(ハイ、これは言い訳)。

では順番に皮膚病のチェックをしていきましょう。

@からGは皮膚病でよくみられるパターンです。実は今回の皮膚病、@からGのどれか一つでもYESなら、合計が3つなくっても皮膚病の可能性あり、です。

たとえば、@ABがYESのワンコで、春から秋にかけて痒がるケースはアトピー性皮膚炎やノミアレルギーの疑いがあります。毛をかき分けて赤い湿疹や茶色いノミがいないか、調べてみましょう。このうち、AがYESで毛が抜けてジュクジュクしている場合は急性湿疹といって、レトリバーを中心に多くの犬種で突発的に発症し、かいたり舐めたりして悪化していきます。Bが食後しばらくしてみられるワンコは食事アレルギーを疑います。メニューを検討しましょう。ただし、外耳炎で耳を、結膜炎や角膜炎で目を気にして顔をこすっている場合もあります。

 CDがYESのときは、脂漏症かもしれませんがそれぞれタイプが異なります。Cは乾性脂漏症と言って表皮が早死にしてフケになるもので、ダックスやビーグルの背中で目立ちます。Dは皮膚の皮脂腺からの分泌物が多くて体がベタベタするもので、Eの体臭の原因になったり、細菌やカビが繁殖して、こじれた皮膚病の元になりやすいです。いずれの脂漏症も専用のシャンプーで洗ったり、食事を低脂肪のものに変えたり、日ごろのケアが大切になります。

 Eの体臭は、どのワンコでも多少はあるもの。まずは臭いの元がどこか、クンクンしてみましょう。耳(外耳炎)口(歯石や歯周病)おしり(肛門嚢や下痢)ではなく、体が臭うなら、皮膚病を考えましょう。あらゆる皮膚病で体臭はありますが、臭いの種類で病気が異なってきます。膿んだような臭いがする(細菌性皮膚炎や脂漏症)油が焦げたみたいなこうばしい臭いがする(マラセチア性皮膚炎)が代表的です。

 Fで毛が毎日のように抜けるのは、犬種によっては正常でもみられます(雑種、レトリバー、柴犬など)。毛は体温調節のために必要なもので、本来は定期的に抜け変わるものですが、常に高温多湿傾向にある室内で暮らしていると、抜け毛の時期は不規則になります。ただし、一定の部位ばかり毛が抜けて地肌が見えるようだと、皮膚病かもしれません。代表的なものは先にあげた急性湿疹のほかに皮膚糸状菌症(カビ)、甲状腺機能低下症のような内分泌異常による脱毛などが考えられます。

 Gのできものがある中年以上のワンコは、最悪の場合、皮膚腫瘍かもしれません。犬の皮膚は腫瘍発生率がかなり高い部位で、シーズーの表皮のう胞のように良性のものも多いのですが、悪性の場合は肺などの内臓へ転移するタイプのものがあります。早めに調べてもらいましょう。

 HとIは皮膚病の症状ではなく、皮膚病の元となる生活習慣を列記してみました。

Hで言うシャンプーはワンコの皮膚を清潔かつ健康に保つために欠かせないケアです。ブラッシングは皮膚の血行を良くするだけでなくスキンシップやストレス緩和にも役立ちます。それぞれの頻度は犬種により様々ですので、ちょうど合ったペースでしてあげましょう。

 Iは先月の「肥満」でも取り上げましたが、おやつ類を必要以上に与えることは皮膚病(主にアレルギー)の元になります。特に乳製品関係や加工品(各種の添加物がアレルゲンとなります)は毎日食べることで頑固な皮膚炎を引き起こしやすいので、なるべく控えましょう。

さて、では皮膚病の対策は、と言いますと、先に書きましたように皮膚病は意外と複雑な病気でして、治療方法は原因・症状によって様々です。注射や内服、外用薬の使用による症状改善から、薬用シャンプーなどを使ったメンテナンス、処方食によるアレルゲン除去や減感作療法のような特殊な治療法などなど・・・一見同じような皮膚病でも二つ以上の原因が絡んでいたり、内臓疾患由来の皮膚病だったりすることがあって、素人療法でかえって悪化させてしまうこともあります(とりあえず自分の使ってる人間用のかゆみ止めクリームを塗っちゃえ、なんてのはダメですよ!)まずは病院で正しく診断してもらうことをお奨めします。そして健康な状態で、春を楽しくお過ごしください。